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フルマラソンで3時間を切ったとき考えていたこと

ランニングを始めたのは2016年の冬のこと。市内で行われるロードレース大会に同僚と参加することになったのがきっかけだった。無様な姿を晒すわけにはいかないと考えた僕は、ひとまずアシックスのランニングシューズを買いに出かけ、その足で近所のあぜ道を走った。

当時の僕は運動から久しく遠ざかっていて、体はなまくら。走り始めて1kmも過ぎぬうちに喉が焼けついて、呼吸が苦しくなった。最初はただ辛いだけ。次の日には3km。徐々に距離が伸びて、気が付けば10kmのジョグが日課になった。

マラソンレースの魅力に取り憑かれるまで、さほどの時間はかからなかったと思う。10kmのレースに出場した翌年にはハーフとフルマラソンに出場し、記録を更新していくことの悦楽を知った。仕事の忙しさで走れなくなった時もあったけど、しばらく経つとランニングを再開し、断続的ではありながらも、それは今日まで続いている。

念願のサブスリーを達成したのは、走り始めてから二年後の2018年11月。つくばマラソンでのことだった。そのときの涙は忘れられない。ランニングに限らず、そこに至るまでに経験したすべての出来事が愛おしく、かけがえのないものになる瞬間。

3つの能力をバランスよく伸ばす

練習内容から話すと、サブスリーを狙うためには次の3つの要素を伸ばす必要があるとされる。

  • 最大スピード(最大酸素摂取量)
  • スピード持久力(乳酸性作業閾値)
  • 筋持久力

最大スピード(最大酸素摂取量)

「最大酸素摂取量」(VO2max)というのは、端的にいえば酸素を体内に取り込む能力のこと。これを鍛えることができれば最大スピードは上がる。
フルマラソンを3時間で走るためには、平均4:15/kmのペースで走り続けないといけない。終盤の失速が避けられないことを考慮すれば、実質的には4:05/kmぐらいのペースを維持したい。

この能力を強化するためにはインターバル走が最適だ。自分の場合は次の2つのメニューを中心に行った。

  • 400m×8本 インターバル(つなぎは200mのjog)
  • 1000m×5本 インターバル(同上)

特に1000mのインターバルの方はひたすらに取り組み、その設定タイムは最終的に3:35まで上げた。もちろん他にもインターバル走のメニューはあるのだけど、この1000m×5が最も効果を実感できたし、設定タイムに対する意識も高く持てていたと思う。

とはいえ、同じメニューを反復すると集中力が切れることがあったので、その時は新しいメニューに挑戦して変化をつけていた。でも結局のところ、基本を忠実に繰り返すのが一番の近道だと思う。

スピード持久力(乳酸性作業閾値)

「乳酸性作業閾値」とは血液中に乳酸が発生するポイントのこと。この値が高いほど、速いペースで走っても乳酸が発生しない(≒疲労が溜まらない)。つまりスピードを維持するための能力になってくる。

自分の場合は3:58/kmのペースが閾値に相当したので、この設定で下記の練習を行っていた。

  • 8000m ペース走
  • 1000m×10本 クルーズインターバル(同上)

このペース走というのが僕にはどうしても苦手で、最初のうちは4000m×2本に分割して行ったりしていた。乳酸性作業閾値を鍛えるためには、それに相当するペースで20分以上走り続けないといけない。せっかちな性格のためか、この20分というのがどうにも辛抱できない。まだインターバル走の方が得意だった気がする

困難は分割せよ、ということで行っていたのがクルーズインターバルだった。これは閾値に近いペースまで落として行うインターバル走のことで、マラソン練習では非常に有効とされている。最大酸素摂取量を鍛える練習ではないので、設定ペースを守るよう気をつけなければいけないけど、上手くこなせれば充実した練習になる。

筋持久力

いくら最大酸素摂取量や乳酸性作業閾値が高くて心肺能力に秀でていたとしても、それだけではフルマラソンを走り切ることができない。42kmを耐え抜くためには筋力が必要だ。そのためには、定期的なロング走を行うことが最も効果的である。

このロング走の距離やペースについては、人によって意見が分かれることが多い。一般的にフルマラソンの本番一か月前には30km走を実施し、「壁」を乗り越える自信をつけた方が良いとされる。その一方で、30km走は足への負担が大きく、怪我のリスクが懸念されるという意見もある。

僕としては後者の意見に同意したい。長い時間走っているのが退屈、という本音もあるのだけれど、30km走を走り切ったからといって「30km」の壁を超えられるという保証はどこにもない。何にせよフルマラソンの終盤は失速するものだし、そんなに本番が怖いなら42km走を行えばいいと思う。

したがって、ロング走は基本的に25kmのみ行った。ペースは4:20/kmくらい。レースというのは不思議なもので、これでテーパリングを行ったら本番を4:10/kmで走ることができた。

月間走行距離は300km

あまり走行距離は気にしないようにしていたけど、結果的に月間300kmでサブスリーを達成することができた。週2回のポイント練習はアップとダウンを含めて15kmくらい、その他つなぎの日は10kmちょっとのjogで、週に一日は完全休養。

ランニング以外にウェイトトレーニングも定期的に行っていた。あくまでも中心はポイント練習にあるので、それを邪魔しない範囲でジムに行き、ビッグ3(デッドリフト・スクワット・ベンチプレス)と内転筋のトレーニング。内転筋を鍛えていたのは、当時オーバープロネーションが気になっていたからだ。

減量が一番の敵

練習より何より辛かったのが減量。甘いものとジャンクフードに囲まれる夢を何度も見た。

体質的な問題なのかもしれないけど、もともと体重はある方で、身長170cmに対して64kg。それを結果的にレース当日61.8kgまで落とすことができた。

鶏むね肉とサーモンにはお世話になったし、糖質カットの麺やゼロカロリーの甘味には何度も助けられた。おかげで栄養価やカロリーに関してはだいぶ詳しくなったと思う。料理を見ておおよそのカロリーを計算したり、その日たんぱく質をどれくらい摂取したのかを頭の片隅で考えたり。

自分なりのスタイルを構築することが大切

もちろん人によってサブスリーに対する考え方は異なってくる。年齢や経験によって大きく変わってくることは否めないし、ここに書いたことはあくまでも基本的な事項に過ぎない。
今後も色々な文献を読み漁り、試行錯誤を繰り返すことで自身のスタイルを構築していこう。