特集記事

引き続きランニング関連の書籍を紹介しよう。

前回の『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』はランナーのバイブルだけど、それと肩を並べる理論書がもう一冊ある。

それが『アドバンスト・マラソントレーニング』だ。

『アドバンスト・マラソントレーニング』とは?

著者はピート・フィッツィンジャー&スコット・ダグラス。

ピート・フィッツィンジャーは、米国代表としてロサンゼルス五輪やソウル五輪を走ったこともあるマラソンランナー。

一方のスコット・ダグラスは、ランニング関連の記事を執筆しているフリーライター。

この二人が2001年に著したのが『アドバンスト・マラソントレーニング』である。

「アドバンスト」という名前の通り、本書は完走を目指すだけのレースから卒業して、ワンランク上のレースを目指す人のために書かれたもの。

日々のトレーニングや大会前のテーパリング(疲労抜き)、栄養や水分補給に関するまで、科学的な情報が網羅されている。

『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』の影響を受けている箇所もあるが、総じて本書の方が具体的な記述に富んでいるといえるだろう。

コラムとして名選手のエピソードが載ってたりして、純粋な読み物としても面白い。

『アドバンスト・マラソントレーニング』目次

ざっと目次を紹介しておこう。

Part1

  1. マラソントレーニングとは何か
  2. 栄養摂取と水分補給
  3. トレーニングと回復のバランス
  4. 補強トレーニング
  5. ベストパフォーマンスのためのテーパリング
  6. レース当日の戦略

Part2

  1. トレーニングスケジュール
  2. 週88kmまでのマラソントレーニング
  3. 週88~113kmのマラソントレーニング
  4. 週113~137kmのマラソントレーニング
  5. 週137以上のマラソントレーニング
  6. 複数のレース

それぞれの章は詳しく説明しないけど、第1章には本書のキーコンセプトが詰め込まれている。

そんなわけで、今回はこの章を中心にまとめてみたい。

優れたマラソンランナーの生理学的条件

『アドバンスト・マラソントレーニング』によると、速いランナーの条件とは以下のようなものだ。

  • 遅筋繊維の割合が高い
  • LTが高い
  • グリコーゲン貯蔵力が多く脂肪利用効率がよい
  • ランニングの経済性が優れている
  • 最大酸素摂取量(VO2max)が高い
  • 回復が早い

遅筋繊維の割合が高い

よく言われているように、速筋/遅筋の割合は残念ながら遺伝によって決まってしまう。

だけど、持久性トレーニングを行うことで速筋(正確には速筋のうちのタイプⅡa繊維)が遅筋的な性質を帯びることはある。

努力次第で伸ばせるということになる。

LTが高い

「LTって何?」って人のために説明すると、これは乳酸性作業閾値の略で、血液中の乳酸濃度が急激に高まるポイントのこと。

走るスピードを徐々に上げていくと、一気に疲労がたまるペースに到達する。このとき、血液中では糖質が分解されている状態。

もちろん糖は有酸素運動に欠かせないエネルギー源なので、このLTが高い方が長距離を走るのには有利だ。

一般的には、LTペースはハーフマラソンのペースと同じ程度といわれている。

グリコーゲン貯蔵力が多く脂肪利用効率がよい

先に述べた糖質というのは、体内ではグリコーゲンに分解されて貯蔵される。

主な貯蔵先は筋肉と肝臓で、もちろん貯蔵できる量には限りがある(人により異なるが、成人男子なら筋肉に400g、肝臓に100g前後)。

いわばガソリンを入れるポリタンクのようなもの。

適切な調整(いわゆるグリコーゲンローディング)を行えば、このポリタンクの大きさ、つまり貯蔵量を一時的に増やすことも可能だ。

さらに言えば、有酸素運動のエネルギー源は糖質だけではない。

運動効率は落ちるものの、脂肪もエネルギーとして利用することができる。

脂肪利用効率を上げれば、それだけ多くのガソリンを使えるということになる。

ランニングエコノミーが優れている

たとえば、LTがまったく同じランナーが同じペースで走ったとして、同じ時間だけ走り続けることができるだろうか?

ランニングエコノミーが異なっていれば、答えは否である。

ランニングエコノミー(経済性)というのは、車でいえば燃費のようなもの。同じエネルギーでどれだけ走ることができるかを意味する。

主な要素としては遅筋と速筋の割合バイオメカニクス、そしてランニングフォームといった差が関係してくる。

特にアマチュアランナーの場合、ランニングフォームを改善することで大幅に改善されるはずだ。

最大酸素摂取量(VO2max)が高い

今度は「最大酸素摂取量って何?」という人に向けて説明しよう。

最大酸素摂取量(VO2max)というのは、体重あたり一分間にどれだけ酸素を取り込めるかという指標のこと。

もちろん、多く酸素を取り込めた方が有酸素運動では有利だ。

酸素がなければ、体内の糖や脂肪を燃焼してエネルギーに変えることができない。

具体的にいえば、最大酸素摂取量の要素は4つ。

最大心拍数心拍ごとに送り出される血液量血中のヘモグロビン量活動筋へ運搬される血流配分である。

このうち、特に心拍ごとに送り出される血液量は、トレーニングによって著しく向上させることが可能。

いわゆるスポーツ心臓を目指そう。

回復が早い

より多くのトレーニングをこなすことができるという意味で、回復はとても大事なポイントだ。

回復速度は遺伝や年齢、食生活、睡眠などによって変わってくるけど、いずれにしても回復日を設けなければオーバートレーニングに陥ってしまう。

適切なトレーニング計画を立て、くれぐれも無理をしないように気を付けたい。

最後に

今回は『アドバンスト・マラソントレーニング』を紹介した。

残念ながら絶版になってしまっているのだけど、一応Amazonでも購入することができる。

ぜひとも手に取って読んでほしい。