特集記事
どんな領域においてもカノン(正典)と呼ばれる本がある。
たとえば経済学ならマルクスの『資本論』だし、政治学ならルソーの『社会契約論』だ。
ピアノ初学者は『ツェルニー』あたりから始めるだろうし、少年漫画を描くなら『ドラゴンボール』ぐらい目を通すはず。
しかし、マラソントレーニングなら?
ランニング関連の書籍は無数に存在するが、カノンと呼べるのはごく僅かである。
そのうちの一冊が『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』だ。

『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』とは?

著者はジャック・ダニエルズ。ウイスキーじゃないよ。
世界でもトップクラスのランニング指導者である彼は、これまでに何人ものオリンピックメダリストを送り出してきた。
そのトレーニング理論を体系化したのが『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』である。
初版が出たのは1998年。その後も加筆が行われ、現在では第3版が発行されている。

『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』目次

ざっと目次を載せておこう。
  1. 成功の必須要素
  2. トレーニングの原理とランニング技術
  3. 有酸素性作業能とトレーニングのプロフィール
  4. トレーニングの種類と強度
  5. VDOT
  6. シーズントレーニング
  7. 体力向上のトレーニング
  8. 高所トレーニング
  9. 800mのトレーニング
  10. 1,500mから2マイルまでのトレーニング
  11. 5kmから10kmまでのトレーニング
  12. クロスカントリーのトレーニング
  13. ハーフマラソンのトレーニング
  14. マラソンのトレーニング
  15. 休養と補助的トレーニング
ポイントは④トレーニングの種類と強度⑤VDOTの章。時間がなくてもここだけ読んでおきたい。
今回もここを中心にまとめてみる。

トレーニングの種類は5種類

ダニエルズ理論の根幹となるのがトレーニング強度。
以下に示す通り、5種類のトレーニングに分類される。
  • イージーランニング
  • マラソンペースランニング
  • 閾値ランニング
  • インターバルトレーニング
  • レペティショントレーニング
それぞれのトレーニングにはそれぞれの目的がある。
「何のための練習なのか?」ということを理解していなければ実施する意味がない。
ちなみに、トレーニングは上から順に設定ペースが速くなっていく。イージーランニングが最も遅く、レペティショントレーニングが最も速い。
各トレーニングを具体的に見ていこう。

イージーランニング

強度:VO2maxの59~74%(HRmaxの65~78%)
目的:心臓の強化と毛細血管新生の促進
いわゆるジョグ。つなぎ練習はもちろん、ポイント練習のウォーミングアップからクールダウンまで汎用性は高い。ダニエルズの理論だと、ロング走はこのペースで実施することになっている。

マラソンペースランニング

強度:VO2maxの75~84%
目的:マラソンペースに慣れる
例えばフルマラソンのタイムが3時間なら4分16秒/kmのペース。日本ではこのペースでロング走を実施する人が多いと思う。

閾値ランニング

強度:VO2maxの86~88%(HRmaxの88~90%)
目的:持久力強化(乳酸性作業閾値=LTの向上)
テンポ走のこと。紛らわしいけど、日本だと「ペース走」って呼ぶことが多い。定義としては「快適なきつさ」を感じるペースみたいだけど、ペース走が快適な人はいない。少なくとも僕は嫌い。

インターバルトレーニング

強度:VO2maxの95~100%
目的:有酸素性作業能向上(最大酸素摂取量=VO2maxの向上)
地獄のトレーニング。フルマラソンなら1000m×5などが有効。つなぎジョグをどれくらい取るかが悩みどころなので、また別記事で考察します。

レペティショントレーニング

強度:VO2maxの105~120%
目的:無酸素性作業能やスピードの向上/ランニングエコノミーの向上
インターバルトレーニングと違い、走り終える度に立ち止まって休憩をとる。基本的には完全休息だけど、ラストの一本は足が攣る。

VDOT一覧表を用いてトレーニング強度を決める

ダニエルズ理論における最大の成果がこのVDOT表だ。
簡単に言うと、VDOTとはランニングで必要な能力(最大酸素摂取量)のこと。これをもとにトレーニングでの適切なペースを算出したのが、VDOT表である。
ちなみに、実際に掲載されている表はこんな感じ。

『ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第三版』82頁。

ただし便利なもので、以下のサイトで自分の記録を入力すると自動でVDOTを算出してくれる。
入力する記録はできるだけ直近のもので、かつ長い距離のものがいいだろう。
フルマラソンを走ったことがなければハーフや10kmの記録でもいいし、初心者なら練習を参考にしたって構わない。 たとえばフルマラソンの記録が3時間の場合、VDOTは53.5になる。イージーランニング(上のサイトだとTraining→Easyの項目)の適正ペースは4:51-5:21/kmになるし、インターバルトレーニング(Interval)の適正ペースは3:42/kmだ。
このペースをきっちりと守ってトレーニングに臨むことが重要になってくる。もちろん、目的意識も忘れずに。

まとめ

今回は『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』を紹介してみた。
ランニング関連の書籍はたくさんあるけど、本格的に取り組みたいのであれば、間違いなくこの本が役に立つはず。
トレーニングの詳しい内容については、また記事を改めて紹介したいと思う。